乳幼児貧血への
取り組み
”乳幼児貧血” とは
妊娠中から2歳までを「最初の1000日」と呼び、近年世界中で注目されています。『こどもの生涯の幸福の条件といえる健康と生涯所得は、「最初の1000日」の影響を多大に受ける』ということが、世界中の様々な研究から明らかになってきているからです。
脳が無の状態から誕生し、劇的なサイズアップを遂げていく「最初の1000日」に欠かせないものが「十分な栄養」とされています。その理由は、脳も食べたものでできているから。とくに「最初の1000日」で脳の発達にとって重要な役割を果たしているのが鉄です。ところが赤ちゃんは1歳前後で生理的な鉄欠乏を起こしやすくなります。欠乏すると運動能力・認知能力・精神活動(社会性)などの発達が遅延するリスクがあるとされていることから、貧血は早期発見・早期改善が重要です。
そのためアメリカの複数の州では、1~5歳の乳幼児健診で⾎液検査を⾏い、貧⾎のスクリーニングが実施されています。また、スーパーなどで購⼊できる⾷品に鉄を添加したり、WIC(Woman,Infants,and Children)という「妊婦と⾚ちゃんへの⾷糧⽀援プログラム」を提供するなど、貧⾎に対する取り組みが進んでいます。
⼀⽅、⽇本で子どもの貧血に関する研究は少なく、特に離乳期以降の⼦どもに関するデータは不足しています。貧⾎のチェック体制や、鉄分をはじめとした乳幼児期の栄養摂取⽀援も欧⽶に⽐べて遅れています。その理由としては、病気のない健康な⼦どもに採⾎をして検査をするため、⼦どもへの負担が⼤きいことや、⽇本の保険制度では補えない範疇であること、マンパワーの不⾜などが挙げられています。しかし根本的には、子どもの貧血の実態やその成長への影響などに関するデータが不足しており、子どもの貧血が重要な健康上の課題であるという認識が不足しているためと考えられます。
そこでラブテリでは2019年から、米国のMasimo社によって開発された、⾮侵襲的(採⾎など、痛みがあったり⼈体を傷つけたりしない⽅法)に⾎中ヘモグロビン濃度を測定できる機械を⽤いて、⽣後6ヶ⽉以降の乳幼児のヘモグロビン値チェックを開始しました。Masimo社の測定機器「Rad-67」では、体重3kg以上の⾚ちゃんから使⽤することができ、Rad-67による測定結果と採⾎による測定結果が子どもでも相関するという研究結果が報告されています(※1)。
非侵襲的ヘモグロビン測定機器「Rad-67」
(Masimo社)
(※1. Arai Y, Shoji H, Awata K, Inage E, Ikuse T, Shimizu T. Evaluation of the use of non-invasive hemoglobin measurement in early childhood. Pediatr Res. 2022 Jul 29. doi: 10.1038/s41390-022-02204-7. Epub ahead of print. PMID: 35906313.)